マンガラギリの手織り村を訪ねる

カディの里マンガラギリ
であるはずだが、
果たしてたどり着けるのか?

マンガラギリのどこに手織り工房があるのだろう

宿でまず情報収集。
「織っているところに行きたいんだけど」
「サリーを?」
「サリーでもなくても、とにかく手織りしているところ!」
「ハンドルームのことか?」
「そうそう、手織り限定で」

宿のおやじさん、スタッフの子に命じてオートに行かせろと指示。
スタッフ、オートを止めて何やらこっちの言葉で言っている、オート氏もオーケーと言っている、値段はというと20ルピー・・・。

安いな・・・。近すぎる、多分。一抹の不安。

オートは走り出し、ほんの200メートルも行ったか、という辺りで車を停め、

「ここらへん」

とあごをしゃくった。

マンガラギリ
ここらへんと言われましても・・・

多分だが、サリーとか売っている店へ連れていけ、ということになったのか、運転手がわからなかったか、どちらか。
まあ、これだけでたどり着いてたら、出来過ぎだろう。

しょうがないので、薬でも買うことにする。咳止めシロップ109ルピー也。
ついでに暇そうな店員に訊いてみる。織ってるところ知らない? 町の中でないかな? と。
店員たち相談、すると店主が出てきて、
「この道をまっすぐ行くとあるよ、1キロくらい先でまた訊いてみな」

なんともアバウトな。
「地名とかないですか?」
「ああ、書いてあげるよ」

店主は紙切れに「OLD MANGARAGILI」と書いてくれた。さらに何か、店名かな、書いてくれたが、それは読めなかった。まあいい、とにかくこの紙を人に見せて歩けば着くだろう。

インド薬局
ここまで教えてくれた薬局の人たち

さて歩き出す。1キロと言われても、なかなか難しい。
少し大きめの交差点があった。立っていた女性に訊いてみるが、わからないと。
うーん、と首を捻るとバイクの人がいる。訊いてみる。

「もうすぐそこだよ、ほらそれ、見えてるだろ」

全然わからない。すぐそこというならすぐそこか、とまた歩きだしてちょっと経ったところで、さっき訊いたバイクの人が追いかけてきた。

「おいおい、やっぱり心配だから連れて行ってあげるよ、乗って!」

バイクである。こっちは2人である。3人乗りか!

インドバイク
ありがとうございます!

すぐそこと言っていたのは曲がり角のことだったらしく、そこからまたちょっと走って細い路地でバイクが停まる。
「ここだよ」
「ありがとうございます!」
「ねえねえどこの国の人?」
「日本人です」
「やっぱりね、俺、テコンドーのコーチやってるの、写真見る?」
「見る見る」
写真たくさん見せてもらった。テコンドー、韓国だよね・・・? 日本でもけっこう盛んらしいけど。

「この町で何か困ったら電話して!」
名刺をくれて颯爽と去って行った。

織りの工房で

路地から一段上がったところに、木や竹でできた掘立小屋のようなものが建っている。
その中から確かに聞こえるカタンカタンという機織りの音。久しぶりに聞いたな。
それにしても、なんだかものすごい環境だ。機織り小屋と隣の建物(これも機織り小屋だった)の間の、人ひとり通れるかどうかという細い路地が、ごみロードなのである。ゴミで一杯なのだ。うーん、こんなところで、機織りなんかできるのかな、やっているのはやっているのだろうけど、しょうもないものを織っているだけかもしれない。

そう思いながら小屋の入り口を覗いてみる。一番近くにいる人が、入ってこい入ってこいと手招きしてくれている。
お邪魔しますと、体を屈めて中に入る。下はむき出しの土だ。土間でもない、本当にただの土。
その土を掘り下げて、織機が作られている。人の下半身は床面より下に入っているわけだ。
こういう織り方は、インドシナ方面では見ることがないと思う。地機(じばた)とはいえ、地面より低く人間が入ることはない。

マンガラギリ
工房の様子

織機が10台くらいか。すべてが稼働しているわけではなかった。

マンガラギリ
半裸のおじさんが美しいシルクサリーを織っている

周囲のあまりに劣悪な環境から、こんなところで??? と疑って申し訳なかった。
ものすごく美しいものを織っていた。

マンガラギリ
地面に座って足は穴の中
マンガラギリ
地面を掘り下げているのがわかるかな
マンガラギリ
まるで塹壕のような
マンガラギリ
こんなきれいな女性も織っていた

今までインドでは男性の織り手しか見たことがない、初めて女性の織り手に遭った。

マンガラギリ
こちらでも女性が
マンガラギリ
織っている生地は地面すれすれにあるわけだ
マンガラギリ
手元は蛍光灯で明るい
マンガラギリ
おじさんたち並んでいる
マンガラギリ
こんな感じで織っている

カタンカタン、もしくはカシャーンカシャーンという杼が飛ぶ音は止まらない。
この工房、英語が話せる人がおらず、オーナーっぽい人も見当たらず、大抵は見せてもらっていると完成品が出てきてお礼かたがた買わせてもらうのが流れなのだが、誰も何も持ってこない!
商売っ気ゼロ!
困ったが仕方がない。もしかすると契約で織っていて、収め先が決まっているのかもしれない。

お礼を言って工房を後にする。

その後の町で

工房を出て、さらに奥へ歩いてみる。
すると向こうから来たサリーの人が、いきなり「写真撮って!」と言ってきた。

マンガラギリ
美人さんだ

おまけについてきて、と自分が来た方向に我々を案内し始める。なんだなんだとついていく。
ついたのは普通の家で、中には男女のカップル。息子? 婿? どうやら最初の女性はお手伝いさんなのかな。

マンガラギリ
ご夫婦と(たぶん)お手伝いさん

「パニ?」と訊かれて「は?」とか言ってると水が出てくるので注意(笑)。面白いことに瓶ごと渡される。インドの人のように、口をつけずに上手に飲まなければならないので大変だ、何よりただの水道水かもしれないから注意(しようがない)。

さらに歩いているととある家の塀の向こうから、おじさんが手招きしてくる。とにかく来いと言うので行く。

マンガラギリ
糸を整える仕事をしている人がいた
マンガラギリの
こんな狭い所で糸巻き中
マンガラギリの
この人たちも織りの仕事についているらしい
マンガラギリの
糸整え中
マンガラギリの
あひるの模様がかわいい

さらに歩いていると・・・

マンガラギリの
また招かれて民家へ、水の踏み絵付き
マンガラギリの
糸巻き中
マンガラギリの
飯を食っていけと言われて困る私

案外、布を探してとか、今ならツアーみたいなもので、この町に来る人はいるのかもしれないなと思った。ここに泊まる人は滅多にいないだろうが、ヴィジャヤワダからならどうだ。
小さな町で、その一角では大勢がいとへんの仕事に就いている。織る人、糸を整える人、巻く人、そして今回は出会わなかったが、糸を染める人やらほかにもたくさんいるのだろう。
マンガラギリ、行ってよかった。
途中一度は飛ばそうかなと思ったりしたが、やはり行ってよかったと思う。

織り人たちの写真

工房の人たちは、みな職人であって、自分の裁量で作ったり売ったりする人たちではないのかもしれない。
もしそうであれば、少なくとも完成品を見せるくらいのことはするだろう。それをしないのは、やはり「売る」権利は持たない人たちだからなのではないかと思う。
織り人たちの写真を撮らせてもらった。皆さん手を止めて、レンズを見てくれる。ありがたい。
それにしても皆さんいい表情をしていらっしゃる。
口はばったいが、職人の誇り、そんな空気を感じる。

俺の仕事を見てくれ。
誰もが自分の織っている布に自信を持っていた。

こんな風に、地べたぎりぎりのところで、ほとんど土の中からと言いたくなるようなところから、美しい布が織り出されていた。
マンガラギリ、本当に行ってよかった。